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日野由利加さん

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第9回・日野由利加さんに聞きたい

今回お話をうかがった日野由利加さんは、『ヒッコリーのきのみ』『ごろりん ごろん ころろろろ』『もりのおくのちいさなひ』の三作品でナレーションをされています。
普段は舞台女優、そしてアニメや映画などの吹き替えもするマルチな才能をお持ちの女優さん。この日は、まず日野さんの出演されている舞台を観劇してからのインタビューでした。ロシアの劇作家チェーホフの実像に迫る作品で、タイトルは『チェーホフ的気分』。
ヒッコリーのきのみ ヒッコリーのきのみ
香山美子・作/柿本幸造・絵
ひさかたチャイルド
ごろりん ごろん ころろろろ ごろりん ごろん ころろろろ
香山美子・作/柿本幸造・絵
ひさかたチャイルド
もりのおくのちいさなひ もりのおくのちいさなひ
香山美子・作/柿本幸造・絵
ひさかたチャイルド


【夢がかなって】
千木良:舞台おつかれさまです。チェーホフのこと、あまり知らなかったんですけどとっても興味
がわきました。

日野:そう言っていただけると、嬉しいです。
千木良:あんなにたくさんの女の人にモテモテだったとは……。
日野:ええ、実際はもっとたくさんいらっしゃったみたいですよ。
千木良:へえ!日野さんの人妻の役も素敵でした。
日野:ありがとうございます。
千木良:吹き替えのお仕事も多いですよね?絵本を読むナレーションは、初めてなんですか?
日野:ええ、でも子供に関わるお仕事は前からずっとやりたくて、もう夢のようで!ずっと子供は欲しかったし、子供番組にたずさわりたかったので嬉しくて。
千木良:そうなんですか。お声が落ち着いてるので、元々何度かされていたのかと思いました。
日野:とんでもありません。何度もNGを出してしまって、みなさんにご迷惑をかけました(笑)。
普段、アニメの声をやるときにはキャラクターの色を打ち出すために、入り込んで演じることが多いんです。だから淡々と「語る」というのがすごく難しかったです。


日野由利加さん


日野由利加さん 【まっさらな気持ちで】
千木良:アニメとはやっぱり違いますか?
日野:状況は同じでしょうけど、相手との距離感が違うのかな?絵本の仕事は、今、ここで喋ってるみたいに普通に話さなければならないから、どこかに演じるスイッチが入っちゃうと、すごく過剰になってしまう――。自分の「欲」っていうのがあるじゃないですか。この台詞が好きだから大事に言いたいとか。でもそれは私のこだわりで、聞く人のこだわりじゃないんだから、「いけない、いけない!」と自分を制しつつ(笑)。まっさらな自分のまんまでフッとその場にいなくちゃいけないというのが、すごく難しかったですね。
千木良:なるほど。
日野:舞台の稽古を長い間やっていると、毎日の積み重ねができてくるんですけれど、最初に台本をいただいて読んだときの自分に戻れる瞬間がないと、自分を客観視する眼というのがどこかでなくなっちゃうんですよね。だから、素直な状態に戻れることはとても重要なんです。本番の幕が開いたとき、フッと自然に舞台に出たときに、まっさらな状態になれるといいなってこと……それをあらためて実感しなおした、という感じですね。
千木良:読んでいて「ここはうまくいったぞ!」とかありますか?
日野:読んでるときに、自分の中でメロディみたいなものが生まれて、それがすんなりと身体に入ってきたとき――例えばごろりんごろり、というリズムであったりとか――そうすると、すごく嬉しいですね。聞いてみて、「この感じ覚えがある」とか「すごく今の自分に合う」とか、絵本を通して何かを共有しあえたら……少しでも感じていただける人がいたら、こんなに幸せなことはないなという・・・。
千木良:読みながらご自身でメロディを奏でる、という感じですかね。
日野:全身が楽器、というか。そういうことなんだと思いますけど。あ、照れちゃいますね、なんか(笑)
千木良:実は私、もうちょっと、お母さんっぽい人なのかと思ってたのですよ。『ヒッコリーのきのみ』のお母さん役の声を聞いて。そしたら、こんなスラッと綺麗なお姉さんでびっくりしました!
日野:ほほ(笑)。
千木良:身のこなしとか、本当にきれいですよね。普段、ダンスや日舞のお稽古をされてるんですか?
日野:いえいえ、今はもう全然。養成所に通ってるときはフェンシングの授業なんかもありましたけど。
千木良:フェンシング!憧れちゃう!シェイクスピアのお芝居なんかもやってらっしゃるんですよね?
日野:ええ。もうすっかり忘れちゃいましたが……。
千木良:そして、本当にいろんな吹き替えをやってらっしゃるんですねえ。タイタニック(DVD版)とか、マトリックスのトリニティとか!。
日野:そうですねえ。



【お母さんの読み聞かせがあってこそ】
千木良:『ヒッコリーのきのみ』のお母さんの声は、とても真に迫っていますが、日野さんのお母さんってどんな方でいらっしゃったんですか?
日野:私、小さい頃ずっと、絵本を読み聞かせてもらってたので、このお仕事をいただいたときに、まず、母に電話したんです。そしたら「よかったねえ〜」ってすごく喜んでくれて。嬉しかったですよ。
千木良:やっぱり、読み聞かせの原体験が、子供に関わるお仕事をしてみたいという気持ちを呼び起こしたんでしょうかね?
日野:かもしれません。私、この仕事をやりはじめたのがすごく遅いんですよ。母に「役者になりたい」と言ったら、びっくりして「まわりにそんなことやってる人いないのに、大丈夫なの?財産食いつぶすの?うちに財産はないわよ」って(笑)。で、ずっと心配され続けて。でも細く長く続けてますね。ずっと続いてるの、本当にこれだけ。
千木良:じゃ、本当に役者さんがお好きなんですね。思い出に残ってる絵本ってありますか?
日野:特に好きだったのは、『あるきだした小さな木』という絵本。色彩にすごくびっくりしたんですよね。松谷みよ子さんとか、『花さき山』の滝平二郎さんも、好きでした。小さい頃見てた「お母さんといっしょ」に絵本を読むコーナーがあったんです。ぬいぐるみたちがトンネルを抜けると絵本の世界が実物大になるんですよ。それがすごく好きで!「はー、絶対こういうお姉さんになりたい」「私がむしろトンネルをくぐりたい!」と思っていたんです。
千木良:そういうば、今、朝のテレビ番組で読み聞かせとかやってるから、そういうのに出演されるといいかもしれないですね。
日野:でも役者をやってるわりに、自分が人前に出るのが苦手なんです、実は(笑)。TVみたいに細切れでお芝居するのが好きじゃないので、やるなら……声だけで。この人がやってるっていうのがわからないほうがいいくらい!いつも思っちゃうんですよね、内緒ですけど(笑)
千木良:マネージャーさんに怒られちゃいますね。
日野:ふふふ。
千木良:ご両親はどういうお仕事をされてたんですか?
日野:父は絵描きで、母もちょっと描くんですけれど。
千木良:わー、芸術一家ですね。お嬢さんが女優さんで。
日野:そうですねえ……苦しそうな後ろ姿ばっかり、見てますからね。そういうふうに言っていただくと、そうかなと思いますけれど(微笑)

日野由利加さん

と紅茶を召し上がる日野さん。本当に美しい身のこなしと声を持つ女優さんでした。どうもありがとうございました!


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日野由利加
文化学院大学部文学科演劇コース卒業。昴演劇学校を経て、昭和62年より劇団昴に在籍。
舞台女優としてばかりではなく、映画、TVなど幅広く活躍。また、吹き替えにおいては、映画のヒロイン役を中心に、アニメまでこなすという実力派。
主な作品として、DVD版の『タイタニック』のローズ(ケイト・ウィンスレット)、『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)から、人気海外TVドラマ「ビバリーヒルズ青春白書』のバレリーなど。
 
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  千木良悠子 千木良悠子   1978年東京生まれ、慶応義塾大学卒。作家として小説「猫殺しマギー」(産業編集センター)を出版しているほか女優や映画監督としても活動。現在「おはなし絵本クラブ」にてウェブ絵本を製作中。
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