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ひだ きょうこさん

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第10回・ひだ きょうこさんに聞きたい

記念すべき第10回目は、新作絵本『ミルキーちゃんとココアちゃん』の作者、ひだ きょうこさんにお話をうかがいました。ひださんは、『ホロンのうたのかい』(偕成社)などの著作がある絵本作家で、なんと「きもの」の本なんかも描いています。めずらしいおうち型の絵本『Papillone』は、フランスで出版されているとか。さてさて、どんなお話が聞けるのでしょう……。
ミルキーちゃんとココアちゃん ミルキーちゃんとココアちゃん
ひだ きょうこ・作/絵
おはなし絵本クラブオリジナル
 

【細かな描写は、子どもたちのため】
千木良:『ホロンのうたのかい』を読んだのですが、すごく可愛い絵本ですね。
ひだ:ありがとうございます。この絵本は、「みんなそれぞれ何かの役に立つ」ということがテーマのお話です。そういえば、小さい頃、家族でオーケストラの演奏を聴きに行ったことがあって、いちばん前の席で、案の定ウトウトしちゃってたんです。曲間の拍手の時だけ起きて、拍手だけしていたら、オーケストラの人にばればれで、「あ、あの子寝てた!」って笑われてました(笑)。これも、絵本のテーマにつながっているのかな。
千木良:クラシックは眠りを誘いますよね。
ひだ:「フクロウのホロンが歌うと、森の動物たちが眠くなってしまう」というシーンを描いているときに、実際に自分も眠くなってしまって、そこだけなかなかできあがらない(笑)。動物の気持ちになって描いてしまったので、ずっとあくびのしっぱなし。気がつくと寝てました!
千木良:寝ちゃったんですか。でも、草の表現が面白いですよね。一見模様っぽいけど、これは「ワラビ?」とか。実際の草を簡略化したようでもあって。
ひだ:そう、ワラビです。親子で、山に行ったときに「この草、絵本で見たことある」なんて思ってもらえたら嬉しいな。子供って、お話の細部まで覚えているから。
千木良:なるほど! 絵本以外に、布でできた本も作っていらっしゃいますよね?
ひだ:布本を作りたいなと思って、2000年から「ミニ絵本シリーズ」として、何かの企画の折に合わせて、小さな絵本を300部ずつ作っています。
『Papillone』も初め自費出版で、私がフランスで知り合った編集者さんに見せたところすぐ「出そう!」ということになって。今年の3月に出版されました。

千木良:赤い糸で綴じてあって、鈴がついてて、すごく凝っていますね。この糸がお話に出てくる綱渡りの糸と同じなんですね。
ひだ:そうなんです。フランス版の鈴は、もっと可愛いのがついてるんですけど、製本は日本の方が上手かな…。製本のずれとか日本なら絶対にないけど、イタリアで製本したのですが、ラテン系みたい(笑)。

ひだ きょうこさん


ひだ きょうこさん 【ちょっと笑える絵本をつくりたい】
千木良:おはなし絵本『ミルキーちゃんとココアちゃん』について教えてください。
ひだ:ある日、羊をスケッチしていたら、その羊は毛をかられていたんです。「痛いのかな?」とか「寒いのかな?」とか考えているうちに、お話が広がっていきました。
千木良:じゃあ白い羊と茶色い羊を見て?
ひだ:羊が自分の毛を編み物してセーターにしたら面白いなあ、それを交換して着たらもっと面白いかも!って。
千木良:O・ヘンリーの『賢者の贈り物』という短編を思い出したのですが――時計を売って妻に銀の櫛を買った夫と、髪の毛を売って夫に時計の鎖を買った妻のお話。でも、それとはちょっと赴きが違いますね。
ひだ:そう、自己犠牲が入ってくるのはイヤだった。毛を刈ってセーターを編んだ彼らが、鏡を見て自分でギョッとするシーンが肝なんですよね。ちょっと笑えるようにしたくて。
千木良:それから、プレゼントの包装紙の色が気になりました。ミルキーちゃんは水色のリボン、ココアちゃんはピンクのリボンをしてますよね。プレゼントの包装紙の色を、相手のリボンと同じ色にしてあげるんですよね。それで「うーん、心遣いってこういうものかも」と感心したんです。
ひだ:確かに私は誰かにプレゼントをするとき、リボンとか相手が好きなものを選びますね。絵本では、プレゼントを渡した後で初めて、お互いの色が馴染むようになるといいと思ったんです。
千木良:なるほど。『ホロンのうたのかい』のような横長の絵本だと、左から右に絵が流れることで、「静」に時間の流れが生まれているのかもしれないですね。
ひだ:そうですね、横長の絵本って好きなんですよ。
千木良:日本の絵巻物とかも、少しずつめくって見ますよね。それに近い感じなのかな。
ひだ:近いですね。少しずつ読んで、子供にわかりやすい内容を考えると、起承転結は明確にしなくちゃとも思います。絵本って簡単なようで難しい。起と結はきちんと考えます。結がないと、私自身がお話をつくっていてもすっきりしませんから。



【良い(いい)加減で】
千木良:絵本づくりのスタンスってありますか?
ひだ:子供が読む、見るということに関しては責任があるので、小さい頃に絶望させてしまうようなものは作りたくありません。その本によって、テーマは違いますが、「良い加減」に、だけど、責任感を持って作るというのが自分のスタンスかな、と思います。
千木良:良い加減というところが重要なんですね、きっと。
ひだ:何回でも読みたくなる絵本、大人になって思い出すと、その時代に戻っちゃうような絵本を作ることはずーっとずーっと目標ですね。
小さいときに『ぐりとぐら』『どろんこハリー』『3びきのやぎとがらがらどん』が好きだったんです。「あのとき肌寒かったとかポカポカ日和だった」とか「こういう光の中で読んでたな」とか、絵本を読んだ状況まで、記憶として今でも残っています。自分の本も、そういう役割を果たしてくれたらな、と思います。教育というより、命の断片。
自分が子供を持ったときに、そういうスローな時間をもう一度子供といっしょに体験していけたらいいなあと思うんです。

【宇宙で絵本!?】
千木良:お話を聞いていたら、今、作ってる絵本ってどういうふうに残るんだろうと思ったんです。私の親の世代には、こういうデジタル絵本はなかったし、私の子供の世代の絵本はどうなっているのかなあ。
ひだ:コンピュータから、印刷したのが出てくるとかね。のりを張り合わせてA3くらいで出力して製本する、手作り絵本キットで自分だけの絵本を作ろう、とか! 宇宙ステーションで売ってたりとかね!
千木良:宇宙ステーションで売られてるかも。
では最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

ひだ:『本を読んで、あったかい気分になってもらえたらいいな、と思います』。あ、『のんびりした、あったかい気分』がいいかな(笑)。

ひだ きょうこさん

未来の絵本はどうなるんでしょう? 
ひださんは出版予定の絵本の仕事がたくさんあるということで、早足で帰っていかれました。私は、絵本の歴史についてちゃんとお勉強しようかなあと思いながら、もう一杯コーヒーを注文しました。


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ひだ きょうこ
神奈川県生まれ。イラストレーター・絵本作家。

絵本には『ホロンのうたのかい』『むぎちゃんのピクニックシート』『むぎちゃんのすなば』(偕成社)などがある。自作のmini絵本シリーズには、『ぼくはばく』『さくらんぼとミント水』。3冊目の屋根裏部屋のおもちゃたちを描いた変型絵本『Papillone』はパリの「L'etreange」より出版。その他アンティーク着物の本「きょう、きのう、きもの」なども。
絵本、書籍以外には、阪神・淡路大震災記念、「人と防災未来センター」の「ひと未来館」の交流の広場で音をモチーフにした壁画などもてがけ、幅広く活動中。旅とフランスとアンティークが好き。

 
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  千木良悠子 千木良悠子   1978年東京生まれ、慶応義塾大学卒。作家として小説「猫殺しマギー」(産業編集センター)を出版しているほか女優や映画監督としても活動。現在「おはなし絵本クラブ」にてウェブ絵本を製作中。
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