第1回
「自分に向かって書いている人がいる」 涙が出るほど感動しました。
岸田今日子さんが絵本をお好きなことは、とてもよく知られています。絵本の朗読のお仕事もたくさんされ、ご自身で童話や絵本の文章を書いていらっしゃいます。まずは岸田さんと絵本の出会いから伺いました。
「私が小さい頃は絵本なんてそんなになくて、童話は読みましたけど、早くから大人の本を読んでいました。絵本というものはずっと忘れていたんです。10代の終わりのことだと思いますけれど、フランス語を教えてくださっていた内藤濯先生という方が「今度、これを訳すんですよ」って『星の王子さま』を見せてくださった。お訳しになったのを読んだとき、とても驚きましたね。絵本とはいえないかもしれませんが、「こういうものが世の中にあるのか」って。大人や子どもというものを越えて、自分のなかに向かって書いてる人がいるんだということを知って、涙が出るほど感動しました。それで本屋さんの子どもの本売り場へ行ってみたら、これがもう花盛りになってて、児童文学や絵本の中で好きになれそうなものを夢中になって探して。その頃の絵本はどんなのがあったかしら・・・。『こねこのぴっち』とか『ブレーメンのおんがくたい』とか。
子どもが生まれた時はもう、家には絵本がいっぱいありましたので、自分の本なのか子どもの本なのか区別がつかないようでした。子どもに読んであげるのも、自分の好きな本ばっかり。私、わがままですからね(笑)マリー・ホール・エッツなんかも大好きだったのでずいぶん読みましたよ。『もりのなか』の続きの『またもりへ』というのを読んだ時にね、絵本のなかでお父さんが「おまえのようにわらってみたいよ」って言うでしょ。私は大人だから、お父さんが言おうとしている「もう子どもみたいには笑えない」っていう意味がとてもよく分かって涙が出ちゃったんですけど、子どもはお父さんだって笑えるのにと思うでしょうね。同じ本でも大人と子どもが違うところで面白がるんだ、ってその時に思ったのを覚えていますね」
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